データマネジメント事件簿:(第1回)問題噴出の新システム、青ざめる担当者
2022-07-27
このブログは、データマネジメント専門会社リアライズで勤務するとある人物が体験した記録である。それは、1本の電話から始まるデータマネジメントの悲しい事件の話だ。
はじめに
今から話すのは2017年の夏。上野動物園でジャイアントパンダのシャンシャンが誕生し、世間がパンダフィーバーとなっている頃の話だ。
江東区木場にあるリアライズのオフィスでは、いつもと変わらぬ一日が終わろうとしていた。
抱えている仕事は予定通り進んでいる。問題があるとすれば、今年の夏が一段と暑いことぐらいだ。
火照った体にキーンと冷えたビールでも飲まないかと、向かい席の同僚に声をかけようとした時、一本の電話が鳴った。
某大手企業のシステム担当者A氏からの入電だった。
問題噴出の新システム、青ざめる担当者
A氏の第一声は
「知人から聞いたのですが、リアライズさんってデータの整備が得意ですよね。間違ったデータを修正したいのですが、その音頭取りの経験ってありますか?」だった。
過去の経験から、電話を掛けてきたA氏が抱えているであろう課題を推測する。
おそらく『システム刷新を計画しているが、システムの中身であるデータの品質が良くない。このデータを整えてから新システムにデータ移行したい』といった相談かと当たりをつける。
詳しい状況を確認したいとA氏に問いかけると、A氏はこう答えた。
「グローバル全体でパッケージを導入し、横串でデータ分析ができるように人事や輸出入、受発注といった基幹系システムを共通化させたのです。システム開発は完了したのですが、運用で困っていまして……」
なるほど、システムは導入済みなのだな。初期のデータ整備は終えたが、継続的なデータ品質維持のための運用方法に関する課題だなと推測した。
たしかに運用フェーズになっても、新たに入ってくるデータ品質の確認と改善は必要になるし、データの活用目的が変われば必要となるデータ品質のレベルも変わってくる。
だからこそ、データ整備は一度やって終了とせず、データ運用のルールや推進体制を整えておくことが重要となる。
これらのことを尋ねると、A氏からは驚きの相談が始まった。
「いや……。データ運用の体制が必要ということはわかるのですが、悩んでいるのはそれ以前の話です。新システムを稼働した後に、マスターデータにおかしなデータが入っていることに気づいたのです。そのため、稼働させながら事態の収拾をしなくてはならないのです」
なんと、既にシステムは稼働しているのか。それは良くない、いや大変な事態だな。
データの状態を確認せずにデータ移行を進め、データの不備に気づかないままサービスインしてしまったケースか。
続くA氏の声は焦っていた。
「現在、データの不備に基づく問題が噴出しているので、とにかく早く事態を収拾させる必要があるのです」
このような事態になった原因を聞いてみると、A氏は次のように答えた。
「本来なら事前にデータの調査をすべきでした。しかし、エンドユーザ側にデータを熟知した“データの生き字引き”のような担当者がいまして、その担当者がデータ品質は問題ないと言うので、サービスインを急いでいたこともあり確認せず進めてしまったのです」
これもよくあるケースだ。日頃からデータの管理や活用を行っている担当者は、社内のデータを熟知しているため、データ品質に対する回答も正確である。
しかし、それは目の前に見えているデータ管理や活用を目的とした場合のデータ品質に対する回答だ。
今回のように、グローバルでデータを共通管理することを目的とした場合は、それぞれのデータ形式や値の入り方を確認し揃える必要があるため、求められるデータ品質の考え方が全く異なってくるはずだ。
だからこそ、いくら“データの生き字引き”がいても、データの活用目的に合わせて事前にデータ調査を行う必要がある。
少しの間を置いてA氏は暗い声で続けた。
「で、何とかなりますか?実はもう予算がほとんど残っていないのですが……」
おわりに
嘘のような話だが、実はこういった問い合わせは度々ある。
開発が終了し、運用フェーズとなっているシステムのデータを、運用しながら整備するのは多大な労力と膨大なコストが発生してしまう。
また、作業手順のみならず、ガバナンスやルールの運用などデータに関する運用体制にも、走りながら変更するという大変な苦労が生じてしまう。
どうか同じような事件が起きないように、データ移行する場合は、必ず中身のデータを調査して、データ整備の予算も用意すべきだとリアライズは考えている。
※記載内容は執筆当時のものです。株式会社リアライズは2023年1月1日に株式会社NTTデータ バリュー・エンジニアに社名変更しました。