デタマネ・ナビゲータ晶吉ブログ:(第3回)恐怖のゾンビデータ【前編】 ~気をつけろ、2025年の崖の手前には落とし穴があるぞ!シリーズ

2022-07-15

 

 

皆さんこんにちは、デタマネ・ナビゲーターの晶吉(ショーキチ)です。デジタル革命の時代と言われる現代、データを武器とするために必要となるデータマネジメントの世界と、その向こうに広がるビジネスの成長へ皆さまをナビゲートいたします。

 

はじめに

ブログ連載「拝啓、データの向こう側より」第3回は、データマネジメントの不備が思わぬ失敗をもたらした事例を紹介するシリーズ『気をつけろ、2025年の崖の手前には落とし穴があるぞ!』から、ケースその2「恐怖のゾンビデータ」を紹介します。

 

 

N社の試練~ 想定外の環境変化

電子部品メーカーのN社は、主に家電製品などに組み込まれる電子部品の製造・販売を行っています。小さな町工場から始まり、今年で創業62周年を迎える、業界では老舗と呼ばれる存在です。大手メーカーには規模で劣るものの、特許権も保有する独自の部品接着方法などユニークな技術力を武器に堅実な事業を続けています。

 

N社の独自技術は、市場での安定したポジションを担保しており、途上国の後発メーカーによる苛烈な競争の影響も少なく、当面は大きな事業リスクは無いと思われました。

また、製品郡毎に配置された7人のプロダクトマネージャが、担当する製品に関する全ての意思決定を行う体制をとっており、俊敏で柔軟な事業活動を支えていました。

 

しかし、2019年末に端を発する新型コロナウイルスの感染拡大と、続くヨーロッパでの国家間紛争による影響は、電子部品の製造に不可欠な材料・素材の供給遅れを引き起こし、特に調達リードタイムが長いレアメタルの供給が滞ることは、N社独自の製品が製造できなくなる致命的な問題でした。

 

 

N社の生き残りをかけた戦略~ 調達DXプロジェクト

N社は、部材の調達リスクを回避するために、以下の戦略を実行することに決めました。これは想定外の世界情勢への短期的な対応としてだけではなく、長期的にも環境変化に強い企業体力をつけるチャンスと捉えた、N社のビジネスプロセス革新を目指したものでもありました。

1.これまで各々のプロダクトマネージャが個別に判断していた部材調達を、専任の購買担当者がとりまとめる全社横断の集中購買体制に切り替える。

2.従来の仕入先だけでなく、新たにアドバイザリー契約をした総合商社からも世界情勢の情報を入手して、集中購買部門がリスクも加味した3年先までの部材購入計画を策定し、調達先への先行発注内示と確保を行う。

 

この取組は社長直轄の「調達DX」と位置づけられ、新たにCDO(Chief Digital Officer)が任命されました。こうしてN社の社運をかけたプロジェクトがスタートしました。

 

N社調達DXプロジェクトは、CDOをプロジェクトリーダとし、各プロダクトマネージャと、新たに設置された集中購買部門長をメンバーに加え、N社のナレッジを集結した盤石の体制となりました。

 

プロジェクトの立ち上げは順調に進み、瞬く間に新たなビジネスプロセスが設計されました。これには、ベテランのプロダクトマネージャ達のナレッジと新たにアドバイザリー契約をした総合商社スタッフの知見が大いに力を発揮しました。

 

「①製品の出荷予測→②製造に必要な部材の特定→③各部材の調達リスク評価→④リスク回避に必要な調達リードタイムの算出→⑤調達先への先行発注内示」という業務フローは、プロジェクトメンバーによるウォークスルー(実際の業務手順が回ることの机上検証)と修正を何度も繰り返し、万全と言えるレベルに仕上がりました。

 

 

 

 

N社内の新ビジネスプロセス検証~ PoCが開いたパンドラの箱

新たなビジネスプロセスの要となる新調達発注システムは、“Procurement System for Innovative Transformation(革新的変革のための調達システム)”の頭文字をとってPROSIT(プロージット)と名付けられました。

プロジェクトリーダであるCDOは、PROSITの開発に入る前に、新たに設計した業務フローが実際に遂行できることを確認するためにPoC(Proof Of Concept:概念実証)を行うことにしました。

PoC用のシステム開発は最小限に止め、製品出荷予測データから必要な発注部材リストを出力する機能と、部材ごとに評価したリスク係数に応じた調達リードタイムを算出する機能の2点に絞った検証が行われました。

3年先までを見据えた製品出荷予測を行うのは簡単ではありませんでしたが、経験豊富なプロダクトマネージャ達のナレッジと、アドバイザリー契約をした総合商社メンバーによる「N社の電子部品を買う側の視点」によるシミュレーションのお陰で、非常に説得力のある予測を導き出すロジックを考案できました。

 

そして予測された出荷製品の製造に必要な発注部材リストを出力しようとしたとき、予想外の問題が発覚したのです。(後編へ続く

 

 

おわりに

ブログを最後までお読みいただき、ありがとうございます。

第3回『気をつけろ、2025年の崖の手前には落とし穴があるぞ!シリーズ』ケースその2「恐怖のゾンビデータ(前編)」は、いかがだったでしょう?

想定外の世界情勢の変化をチャンスと捉え、将来に向けた果敢なビジネスプロセス改革に挑むN社の調達DXプロジェクトは、環境変化リスクに強い企業への飛躍を成し遂げることができるのでしょうか?

結末は後編をご期待ください。

 

次回も皆さまを“データで創る一歩先の未来”へナビゲートさせていただきます。

敬具

 

 

※本文中のケースは実際にあった事例をベースとしたフィクションです。実在する企業・団体とは関係ありません。

 

 

 

次回のデタマネ・ナビゲータ晶吉ブログ

○○不在が巻き起こす衝撃の結末。すでに生産終了になっている製品が、なぜか出荷可能と表示されてしまう?

(第4回)恐怖のゾンビデータ【後編】

 

   

前回のデタマネ・ナビゲータ晶吉ブログ

お客様へ寄り添うはずの新システムが、リリース初日からまさか大混乱を招くことに。その原因は?

(第2回)お客様に寄り添いたいのに…【後編】

 

 

 

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