【前編】With コロナ時代にこそ高まるデータマネジメントの重要性

こちらは2022年1月に発刊された統計と情報の専門誌「エストレーラ」に、弊社代表の大西が寄稿したものを転載しています。

 

1.はじめに

「情報(データ)は、ヒト・モノ・カネと並ぶ第4 の経営資源」と言われて久しく、昨今では「データは次のオイルである」とも称されている。

公的機関においてもEBPM(Evidence Based PolicyMaking)が求められ、「自分はデータなど見ずに、勘と経験と度胸(KKD)で判断する」と公言して憚(はばか)らない経営者が跋扈(ばっこ)していた時代からすれば、データに基づく意思決定の重要性については社会的認知度が大いに向上していると言えるだろう。

 

 さらに、「With コロナ」と呼ばれる時代にあっては、「データ」、より正確に表現すると「適切にマネジメントされたデータの重要性」が高まっている。

なぜ、With コロナ時代にデータマネジメントの重要性が高まるのか。

本稿では、その理由をわかりやすい実例を紐解きつつ解説する。

 

 

2.コロナがもたらした顧客行動変容

コロナは我々のビジネスや日常生活の上での行動を根底から覆した。

ワクチンが開発された後であっても、「仕事をすること=オフィスに行くこと」ではなくなっている。

これまでのノーマルにおける法人営業の現場では、「何はなくとも、定期的にお客様へ訪問営業すること」が当たり前だったが、With コロナ時代には「本当に重要な商談以外は対面ではなく、なるべくリモートで済ませたい」という形に法人顧客の行動が変容してきている。

ルートセールスの営業マンが「飛び込み営業」をしたくても、オフィスに顧客が出社していなければ営業にならない。

 

 また、個人の消費者においても、かつては「ワイワイガヤガヤ賑わって混雑しているお店でショッピングを楽しむ」という消費生活がノーマルだった。

しかし、With コロナ時代にはそうした買い物体験を望む顧客層が一部戻ることはあっても、「何かあったら怖いので、できるだけ“密”を避けて短時間で済ませたい」、もしくは、「できる限りオンラインで買い物を済ませたい」という行動に変容する消費者が少なからず存在する。

 

 このように我々の行動が“密”を避け、“疎”を求めるようになると、これまで企業が対人・対面(リアル)では当たり前にできていたこと、たとえば、わかりやすく言えば、店頭での店員による呼び込みや特売ポップによる需要喚起などが極めて難しくなる。

その代わり、自社のお客様とのリレーションシップをオンラインで、つまり、「データを通じて」画面越しに良好な関係を維持し、競合他社に奪われないよう強固にしなければならなくなる。

 

 こうした顧客行動の変容に対応するために、企業は「自社のデータがどういう現状になっているか」と向き合わざるを得なくなった。

この時、企業の眼前に突き付けられるのが「データマネジメントの課題」である。

 

 

3.切実なデータマネジメントの課題

リアルな営業現場における顧客接点やEC サイト等のオンラインでの顧客接点、コールセンターでの問い合わせやアフターサポート等における顧客接点など、企業は複数の顧客タッチポイントを保持していることが一般的である。

多くの企業では、自社の様々なシステム(小売業でいえば、店舗系のIDPOS(顧客のID[性別・年代等の顧客属性情報]が紐づいた販売データ)管理システム、ネット系のEC ショッピングシステム、など)にお客様に関するデータが散在し、「データがシステム・組織間で相互につながっていない現状」を目の当たりにしているだろう。

つまり、「自社のEC サイトで年間○円以上ものお買い物をしてくださっているお客様が来店した際に、そのお客様を自社にとっての優良顧客として認識し、店舗での特別な接客対応を行うことができない」という事態に陥っているのである。

 

 「明日来る(アスクル)こと」が特別な価値を持った時代ならいざ知らず、「注文した当日に商品が自宅にデリバリーされること」が今や当たり前になった。

ネットと物流が高度に発達した現代において、消費者は「自宅に近いから」といったリアル店舗の持つ優位性で発注先を選ぶ必然性がない。

リアルな店舗でもスマホのEC サイトであっても1 人ひとりのお客様の行動を把握し、買い替え時期に合わせた消耗品のレコメンドや優良顧客向けのプレミアムなサービス等を提供することで、自社での買い物をいかにリピートしていただけるかが死活問題になる。

With コロナ時代だからこそ企業がデータマネジメントに向き合わざるを得なくなった端的な理由が「システムや組織の間でデータが整備されておらず、つながっていないため、活用できないこと」と理解いただけるのではないか。

 

 ここで少し目を転じて、「なぜ企業内部においてデータマネジメントがこれまで顧みられずに放置されてきたのか」に関して考察を述べる。

 

 

4.なぜデータマネジメントが難しいか

 「いざ、データを活用したい」という場面で、企業は活用対象となる“顧客”や“商品”、“部品”等に関わる基軸データが社内のあちこちに散在し、整合が取れていない、粒度が合わない、精度が悪い、どのシステムにどのデータが存在するのかすらわからない、といった現状に直面する。

なぜ、そうした状態に陥ったかという背景としては、大きく以下の3 点に集約される。

(1)メインフレームからクライアントサーバシステム、Web へとIT の進化とともにシステムが分散化し、無秩序なデータも拡散・大量化した。

(2)個別の業務部門ごとに紙処理を電子化することを目的としてIT が導入され、データのサイロ化・部分最適化が進行した。

(3)情報システム部門は「システム」を全社横断で見ているが、「データ」を全社的にケアする組織はこれまで存在しなかった。

 

 前節で触れたリアル店舗を持つ小売業の事例のように、リアル店舗のID-POS 管理システムもEC サイトのオンラインシステムもそれぞれが「単独で業務処理を回す」上では問題が表面化しないことが多い。

「リアルとオンラインの顧客接点をつないで、優良顧客の行動分析を行いたい」といった組織を横断するデータ活用ニーズが発生した際に、各システムにサイロ化したデータがつながらず、整合性が取れないといった問題が顕在化するのである。

こうした「個別の業務上では不都合が見えにくいが、活用しようとすると障害になるデータ」のことを筆者は「コンフリクト・データ(矛盾したデータ)」と呼んでいる。

 

 

図1.jpg図1:コンフリクト・データの実例

 

 

 コンフリクト・データが発生する原因は、自組織の業務を回すためだけのデータを生産し、流通させてしまうマネジメントの問題が本質であり、システムの改善だけでは決して解決されない。

自社が取り扱っている商品・材料、顧客/仕入先の企業・個人、組織・従業員等のデータが組織横断的に一意性と整合性を保ち、分析や仮説・検証が可能な状態であること、活用の目的に照らしてデータマネジメントが行き届いた状態であることがデータを活用する上で要となる。

 

 「IT を経営に活かす」、「IT でDX(デジタル・トランスフォーメーション)を実現する」といったバズワードが喧伝(けんでん)されているが、つまりはIT の中の「血液」であるデータをどうビジネスに活用するかという命題に企業は応えていかなければならず、そのために最初に越えなければならないハードルがデータマネジメントの課題であることに企業経営者は一刻も早く気付くべきである。

 

続きは後編でご紹介します。

 

 

※記載内容は取材当時のものです。株式会社リアライズは2023年1月1日に株式会社NTTデータ バリュー・エンジニアに社名変更しました。

 

 

 

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