国民IDに関する議論について

このコーナーは、リアライズ社長の大西が発信するブログです。最近の出来事や、今後のビジネスへの考えを綴っています。

 

随分と更新が滞ってしまいました。
日々のビジネスや社会で起こっている事柄において、自分の考えを「ああ、このことについて触れてみたいな」等と思うことも多々あるのですが、諸般の事情でタイミングを逸してしまうことが多い今日この頃で、少し反省です。

久しぶりに社会とデータマネジメントに関する考察をば、書いてみたいと思います。

先の参院選で、消費税の増税に関する話題が大きく取り上げられていましたが、その議論と合わせて、累進性の解消のために「国民ID」の議論が取り上げられていました。
非常に残念なのが、国民IDの議論が「消費税を上げるためのツール」のような捉われ方をしていた点です。

国民の所得の把握による税・保険の徴収一体化、効率化など、官側のメリットだけが注目されていますが、これは大きな間違いだと感じます。

まず、交通事故を起こしてしまったとき、最近多発している自然災害が発生したときに、行政機関横断的に個人を特定できる番号があれば、地域を問わず、搬送された病院等で瞬時に過去の医療履歴を調べ、既往症や薬物への反応等を確認できることで適切な医療行為を受けることが可能になると思います。
さらに、事故証明や診断証など、事故を起こしてしまった後に、国民が準備しなければならない「公的機関が発行する証明書類」がありますが、これをそれぞれの行政機関や病院に出向いて、窓口で発行してもらう行為自体が、電子的に情報連携させることで、不要になると考えられます。
当然ながら、個人の明確な意思表示の確認と厳格なセキュリティの確保が不可欠ですが。

少し考えてみただけで、国民にとって嬉しいこうした場面はその他にもたくさん、たくさんあります。

行政機関の手続き・システムの数だけ、申請者である国民を管理するための「個人マスタ」が存在するといって過言でありません。
各行政手続きを所掌する各公的機関、自治体の窓口はばらばらですが、個人の視点からすると、ライフイベントは全てつながっているのです。
引越しを行った場合に、なぜ転出元と転入先の両方の自治体に届出を行わなければならないのか、その住所変更の情報によりなぜ運転免許証やパスポートの更新が行えないのか。

私たちの身の周りでは、これまで「国民側が役所にお伺いすること」が当たり前になっていて、感覚が麻痺していると思いますが、そもそもこうした発想自体から脱却して、縦割りの行政機関全体に対して「横串」を通すことで、古く過去からの慣習的な国民の手間を排除することが可能になると考えています。
企業法人のIDなども標準化・共通化されて然るべきであり、データマネジメントの専門家から言わせれば、こうしたIDが不在の状況下でのデータ運用は国家的な損失になっていると感じております。

さらに言えば、行政機関の手続き・システムの数だけ、申請を受け付け、紙の書類の発行や保管ファイリングを行っている行政の方々がいるということになります。
行政機関同士の情報連携を適切に行うことで、行政コストを大幅に下げることができ、税金を本来必要な領域に振り向けられるようになると考えます。
これは、延いては国民の大きなメリットにつながることではないでしょうか。

せっかく盛り上がりつつあった国民ID導入の機運が殺がれ、本来行われるべき国民の便利さや安心・安全を増進させるための活用方法に関する議論が矮小化されないことを願って止みません。

PS.前回ブログに書いた家庭菜園の野菜たちの調子が良くありません・・・
また、次回に続報を書きたいと思います。

 

 

 

※記載内容は執筆当時のものです。株式会社リアライズは2023年1月1日に株式会社NTTデータ バリュー・エンジニアに社名変更しました。

 

 

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