【リアライズ通信(201209)】

このコーナーは、リアライズ社長の大西が発信するブログです。最近の出来事や、今後のビジネスへの考えを綴っています。

 

2012年度の上半期が早くも終ろうとしています。

相変わらず多忙を極めておりますが、グローバル最適生産/最適調達、顧客接点強化/リテンション向上、ヒト・モノ・カネの社内資産の可視化/ガバナンス強化、マルティデバイスに対応するための商品マスタ運用管理の最適化など、エンタープライズがデータマネジメントに取り組まなければならない必然性、切迫感が現実に高まっている潮流を受けて、おかげさまでお客様からたくさんのお引き合いをいただき、当社事業も順調に伸びております。

そうした中、最近は随分と誤解されるケースが減ってきたのですが、未だに誤解が拭い去れていないなあ、と感じる事象として、

「データ品質の管理って、ツール化すれば人手でやる必要はないんじゃないの/機械で自動的に処理できるんでしょ?」

「リアライズさんも、人手がかかって大変なデータ品質向上サービスなどを提供するのではなく、ノウハウをツールにして売れば、もっと利益率の高い楽なビジネスができるんじゃないの?」

といったご質問を受けることがあることです。

今回のリアライズ通信では、このポイントについて書きたいと思います。

データ品質管理においてツール化による自動化に適した処理を人手を介さずに正確に実行していくべきことは自明の理であり、論を待ちません。
当社でも、ツールにより実行可能なデータ処理をわざわざ人手でやることはありませんし、当社でも長年培ってきたデータ品質維持・向上の実践に基づいて機械処理可能な範囲をいかにして拡大するか、日々取り組んでおります。

しかし、ツールだけで日々発生するデータを高い品質で維持・運用することが難しい合理的な理由が大きく二つあります。

まず1点目は、『データは人が生み出すものであること』です。

データは登録する人の認識や感覚によって、ある意思のもと発生するものであり、同じ「顧客」という情報項目でも、ある立場の人が見れば「個人(お客様)」であり、「法人(お客様)」であったり、さらに「法人内の支店・営業所(お客様)」であり、さらに「法人内の支店の中の商品の納品先である担当者個人(お客様)」だったり、異なる「意味」を持ちます。

また、同じ「取引先」という情報項目も、それが「(最終)顧客」だったり、「(自社商品を代理販売してくれる)パートナー」だったり、「調達先・仕入先」だったりすることがざらにあります。
データの発生源である現場のエンドユーザにとっては、「HBの黒いえんぴつ」が何本ほしい、という要求だけをデータで投げかければ良く、調達・購買部門において「芯が折れにくくて長持ちする○○メーカ製のHBの鉛筆」というデータが必要になるなど、システムを利用する立場の違いと時間軸によってデータそのものの意味が異なります。

さらに、自社の組織を指すときや取引先を呼称するときに、長ったらしい名称は書くのが面倒だし、
呼ぶときも不便なので、正式名称を略して自分たち社内だけでわかる略称を多く使っていませんか?
(SS本、CSS課、2企本、3G推、TMKK、日化[親会社頭文字と子会社頭文字で略す]、など)
同じひとつの会社や商品、部品、事象を表すにも、その人の認識、とらえ方、必要性、立場等によって発現するデータのバラエティはまさに類型化しきれるものではありません。
それをパターン化して辞書化することも不可能ではありませんが、数百万件、数千万件のデータのうち、そうしたデータの発生が数件だった場合、一定のルールに基づいて人間の知覚でそれを補足し、改修する方がずっと合理的といえます。

また、機械的な変換により、本来の意味を崩してデータを強制的に置換してしまうケースが多くあるため、データ品質を真に確保するためには、最終的に人手による目視チェックが必要になります。
発生源が相当限られているか、もしくは、個人の姓名・住所等の固定的なデータに対しては辞書化による機械処理アプローチが向いている領域もありますが、そのような場合でも「寄せ過ぎ/マッチせずに寄せられない」という事象は必ず発生します。
ツール処理ができる領域を見極め、人的な運用対応もちゃんとセットにしたデータ品質管理の実行力が必要であることがご理解いただけたと思います。

次に2点目が、『データ運用管理には変化対応力が必要であること』です。

たとえば、かつてはあるシステムのマスタから吐き出されるデータの利用先が自社の商品紹介Webサイトだけだったものが、商品販売・受注用の自社コマースサイト上でも使われ、出店先のショッピングモールサイト上でも使われ、さらにモバイルコマースサイトやアフェリエイト先から連携されるデータとして使われるようになったときに、そのデータに求められる品質も鮮度も量も当然変わってきます。

このように、ビジネスモデルやサービスモデルの変化に応じてデータに対する要件や補足したい観点や軸は自ずと異なってくるものであり、爆発的な勢いで増加を続け、企業の内外を問わず流通し、様々なユーザの目にさらされるようになった今のインターネット時代のデータの位置づけは時々刻々と変化しうるといって良いと思います。

そうしたときに、データ品質を維持するためのツールをあまり硬直的に構築してしまうと、変化への対応力・耐性を落としてしまうことになりかねません。
ビジネスの変化に対して迅速に運用を進化させ、「従来とは異なる値を新たな検証・分析のために加えてみる」といった柔軟な対応が人的運用対応では可能なため、ツール化と人的運用対応のベストミックスこそがデータ品質管理の要諦であるといえます。

以上のご説明で、自社のデータを価値ある情報資産として維持するためには、ツール処理だけではない人間的な運用(予算、組織、体制、ルール、評価、等)が必須であることがご理解いただけたのではないかと思います。

「データ運用管理にそんなに人的な労力(コスト)がかかるのだったら、予算が取れないからやりたくてもやれないよ」
といった悲しい言葉を耳にすることがありますが、そもそもそれはシステム活用の目的を放棄することに近しく、データ品質の維持もできないシステムを作った側に問題があるかもしれません。
データ品質の維持・管理、つまり、アプリケーションのように代替えが効かず、企業にとって10年、場合によっては100年の資産価値となり得るデータの価値を高め続ける営みには人手がかかるのは事実です。
しかし、それによって得られる事業価値をいかに最大化するかを考えることの方が優先であり、その活動を支える社内スタッフへの適切なリソース配置や教育・育成、評価等を適切に行うことが重要と考えております。

このテーマは、データマネジメントの本質にも関わる論点であり、また別の機会にでも詳しく触れていきたいと思います、それでは、また次回のリアライズ通信でお会いしましょう。

 

 

 

※記載内容は執筆当時のものです。株式会社リアライズは2023年1月1日に株式会社NTTデータ バリュー・エンジニアに社名変更しました。

 

 

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